整形外科
整形外科 診療内容
当センターの整形外科では、大きく3つの特徴があります。
1 脳性麻痺を中心とする脳原性障害児者に対する整形外科的機能再建について
当センターでは、脳性麻痺による症状からの改善や耐え難い痛みの緩和を目指した診療を行っています。
先天的脳性麻痺 | 先天的な脳性麻痺は、発見と対応が遅れるほど骨に異常が出てきます。 4歳までの対応が非常に重要です。 |
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後天的脳性麻痺 | 脳卒中などが原因で後天的に麻痺となる場合です。 個人の症状にあわせた対応が非常に重要です。 |
患者様の状況によって目標と対応が異なります。
重度 | 緊張をとる。脱臼による「眠ることもできない耐え難い苦痛」の緩和を目指します。 |
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歩ける方 | まともに歩けない、歩くと痛い状態からより歩きやすい状態を目指します。 |
脳卒中 | 機能の復活を目指します。 |
股関節脱臼 | 耐え難い苦痛を起こす脱臼をとります。(30症例) |
また、上記では改善できない場合は、レベルに応じた手術を行うことができます。
その他、筋肉の収縮を和らげる「ボトックス」や脊髄に直接投与して筋肉の痙縮を和らげる「バクロフェン」の投与も行っています。
松尾法による筋解離術
当センターは松尾隆先生(南多摩整形外科病院院長、元福岡県立粕屋新光園園長)のもとに 研修に行き松尾法による筋解離術(整形外科的選択的痙性コントロール術)を平成12年より開始しています。この手術を受けられる病院は、山陰両県でも当センターだけです!
手術により座位のとりにくかった人はとりやすく、四つ這い移動のお子さんは歩行器歩行や杖歩行に、 歩行器歩行のお子さんや二本杖で移動できていた人はしっかりと何も持たずに歩けるようになったりしています。
適応手術
痙縮による筋緊張やアテトーゼによる不随運動のために幼少期では運動発達がうまくいかない方の発達をうまく引き出してあげたり、すべての時期において上下肢の変形拘縮、脱臼等の関節変形をお持ちの方、側彎症をお持ちの方、耐えがたい痛みやしびれなどの頸椎の神経症状をお持ちの方などが適応になります。
弧関節、膝、足首 | 股が開かないで陰部清潔が保てない方、座位が困難、長時間座れない方、膝が曲がったままの方、すぐに膝が突っ張ってしまう方などは改善します。また、先に記載したように歩けないお子さんが杖歩行レベル付近まで改善したり、なんとか立てる方や尖足で歩いている方等の歩容が改善します。 |
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肩関節、肘関節、手関節、手指 | 肩が後ろに引かれたり、上がったりしてリーチ動作や歩行に困難さを感じている方、肘が伸びにくい方、手首が曲がっている方、指がスワンネック変形などの変形でうまく摘めない方等は、その機能改善や機能の発達が認められるようになります。 |
頸椎 | 首の不随運動で変形をきたししびれや箸が持ちにくくなったり、歩きにくくなってきたりした方、耐えがたい痛みにさらされてきた方など良くなってきます。疼痛の程度は100%改善の2名を含み、平均で91.3%でした。またアテトーゼ型脳性麻痺頚髄症治療成績評価でも平均34.8%の改善率を認めています。患者さんの中には「生まれてきて初めてこんな楽な首を経験しました」と言われる方もいます。 |
側彎 | 背中が曲がってしまった方、側彎の角度はあまり矯正できませんが筋緊張による苦しみから解放されたり、ものすごい反り返りから解放されたりします。また、経皮的酸素飽和度も1~2%改善し、呼吸抑制の軽快にも役立っています。 |
整形外科的選択的痙性コントロール術だけでは軽減できない場合は骨切り術や脱臼整復術、 頸椎前方固定術等の骨に及ぶ手術も追加する必要があります。
痙縮の治療は他にもありますが(当センターでも他の治療もしていますが)この手術は侵襲が少なく、 また確実に効果が現れるものです。痙縮で苦しんでおられる患者の皆様に是非お知らせしたい治療法の一つと確信しています。
*補足:脳卒中後遺症で痙性が強く関節拘縮になっている方も尖足歩行の改善、変形拘縮の軽減、 固く握りしめられた指が(自発的な動きは獲得されにくいですが)ゆるんで指の間の清潔が保たれたり、 軽い麻痺の場合は自発的な動きも出現してきたりします。
2 小児整形外科について
「0.03%」を見つける超音波検診
通常の小児科検診では、目には見えない幼児の異常を見逃すケースがあります。特に痛みがない場合は、より気づきにくい状態にあります。
しかし、先天性の異常は、0.03%の確率で存在しています。
この異常を見逃さない検診を目指しています。
当センターでは、島根県内で唯一「超音波検診」を実施しています。超音波で目に見えない内部まで検診するため、見逃すことがありません。
主な症例と診療方法 | |
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■先天性股関節脱臼 エコーを使い、レントゲンの被曝をできるだけ防ぐように行います。抱っこの仕方、寝かせ方等の指導を取り入れています。手術室も新しく建設され、手術ができるようになりました。 |
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■先天性内反足 Ponseti法を使い徒手整復の治療を行います。遺残変形に対して手術を行っています。 |
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■ペルテス病 免荷装具を使いコンテインメント療法を中心とした治療を行っています。必要により手術的治療も行います。 |
6~8歳くらいの子に多く、特にわんぱくな男の子に多い病気です。
大腿骨頭の骨がボロボロになるため、治療は装具をつけて1年以上かかります。
長期入院が必要ですが、その間に施設内で学習をする必要があり、受け入れ施設は多くありません。当センターでは学習しながらの長期入院が可能です。
3 リウマチについて
西日本でも有数の治療。生物学的製剤+2名の専門医
リウマチの治療は、昔は弱い薬から始め、症状の悪化に伴い強い作りを使っていました。そうすると、薬が効くころには関節がボロボロになってしまいます。
当センターでは、「治るための薬」として生物学的製剤を使用します。副作用のリスクがあるため、管理能力が必要です。
当センターでは、2名の専門医が所属している西日本でも珍しい医療センターです。
対話をしながら着実に治療いたします
リウマチを患者様によく理解していただき、そして御自分の状態を把握していただいた後に、リウマチの基礎療法を絶えずお話しながら、薬の副作用に注意を払い、関節の破壊と手術のタイミングも考えて集約的治療になるように行っています。
リウマチの診療方法 | |
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診察内容 | 1人平均約15分をかけて丁寧に診察を行います。抗リウマチ薬(特にメソトレキサート)を積極的に使用しています。すべての生物学的製剤を積極的に使用しています。顕著な治療成績の向上が得られています。白血球除去療法(抗リウマチ薬等の効果がない場合、副作用で使えない場合等に使用します) |
手術 | 人工関節手術 |
入院 | 教育入院、リハビリ入院、手術のための入院が可能です。 |
リウマチ教室 | リウマチをよく知り、リウマチと上手に付き合っていくために、初夏と秋の年2回開催しています。自ら手術等の判断をすることができます。
4回(2年間)で1クール(総論、保存的治療、外科的治療、社会福祉の利用)となるようにしています。講義の他、ゲームや自助具作り、使用等を通してリウマチの理解を深めるように企画しています。 |
スポーツ外来
MRI検査可能。3人の専門医が診察いたします!
当センターでは、レントゲンでわからないものや原因究明のために精密に調査をしたい時は、MRIで検査することが可能です。
また、3人の専門医がいる県内では珍しいセンターです!